かつ丼、おかわり!

僕が初めて吉野家の牛丼を食べたのは13歳の、季節は覚えていないけれど、街に遊びにいったときだ。街、地元ではターミナル駅たる仙台駅や広瀬通勾当台公園の界隈に出掛けることを街に行くと称していた。恐らく、今もそうだろう。

牛丼大盛¥500-

食べ盛りには多少物足りない、けれど、650円の特盛は小遣い的に厳しく、妥当な折り合いだったと思う。このあたりの線引きも含め、少年時代の僕らにとって一種、大人への階段だったと言える。

それから10年後、人形町で僕は牛丼を食べていた。

牛丼並盛¥280-

特盛を頼むよりも並盛を2杯の方がお得だったあの時代。吉野家松屋すき家をリアルにハシゴしていたり、メガマックにドキドキした、食べ盛りが終わらない20代のまだ前半だった。

それから更に10年以上の年月が流れ、今夜の僕はやよい軒のかつ丼を食べた。たまに催される390円セール。

2杯は食べられない。
並盛で充分だ。

最寄駅からマンションまでの帰り道、10年後に思いを走らせる。食べ盛りに入る息子をかつ丼390円セールのお店に連れて行くシーン。

あー、お腹すいた。
僕、大盛にするね。

僕は躊躇わず、並盛の食券を2枚買って息子に渡すだろう。息子は不満げな表情を浮かべ僕を見上げる。

違うよ。
お代わりすればいい。

僕はまた僕のための食券を買う。

お腹いっぱい食べるといい。
心配はいらない。
食べ切れなくて残す事になってもお父さんが食べてあげよう。